ウェブ技術に出会った時、美術館博物館巡りが好きだった大武は、これでデジタルミュージアムが作れると直観した。そこで、展示空間そのものが作品であるという考えに基づいて、民家を改造して作られた日本民藝館をネットワーク上に再構築することにした。民藝という一見デジタルと相容れなさそうに見えるアナログな文化を持ち込むことで、ネットワークがより創造的な場になりうると考えたのである。企画書を持って館を訪れ、許可を頂いた。約3ヶ月かけて文献を調べ上げ、コンテンツ化し、1995年にオープンした。その後は、小学生を含む広範の世代の、世界中の方に訪れて頂き、展示と同時にその根本となる用の美の思想を伝えることができた。情報デザインを実践的に研究することを目的とする用の美システム研究会を作り、その仲間と共に制作、運営を10年間継続した[1, 2]。
2001年から2002年にかけて、観客が美術館を鑑賞するプロセスを作品化することにより、効率的にコンテンツを制作する手法を考案し、ワークショップ形式で観客がデジタルミュージアムを制作するという世界初の実験を行った。研究成果をまとめた論文をコンピュータヒューマンインタラクションに関する国際会議で発表したところ、会議中に開催されたハイライトのパネルディスカッションに選出され、注目を集めた[3]。
活動を自然な形でコンテンツ化するスタイルは、研究・教育・社会活動の基盤となるものである。現在は制作会社に制作を引き継いでいるが、得られたノウハウやヒトのつながりを今後の活動に活かしていきたい。
参考文献:
[1] 大武美保子. 七年目を迎える日本民藝館ホームページ, 民藝, vol.582, pp.28-32, 2001.
[2] 大武美保子. 日本民藝館インターネットで情報発信, 民藝, vol.520, pp.62-64, 1996.
[3] Takashi Kiriyama, Mihoko Otake, Hiroya Tanaka, Junichi Tokuda, Haruka Tanji, Takeshi Matsushita, Masatoshi Arikawa, and Ryosuke Shibasaki. Exploring Exhibit Space in a Personal Perspective: An Interactive Photo Collage of a Folk Crafts Museum. In Proceedings of ACM SIGCHI Designing Interactive Systems, pp. 393-398, 2002.
リンク:
-
日本民藝館(1995-2005)